ダイヤモンドの巨人、デビアスを知る
デビアス社の歴史は、19世紀末、希望に満ちた開拓時代のアフリカ大陸で幕を開けました。セシル・ローズという名のイギリス人が、その物語の主人公です。時は1888年、南アフリカのキンバリーという小さな町で、ローズは小さなダイヤモンド鉱山を手に入れました。これが、後に世界を席巻する巨大企業、デビアス社の誕生の瞬間でした。
当時の南アフリカは、ダイヤモンドの宝庫として世界中から注目を集めていました。いくつもの鉱山が発見され、多くの人々が一攫千金を夢見てこの地に集まっていました。ローズもまた、その夢を追う一人でした。しかし、彼には他の採掘者とは異なる野心がありました。それは、単にダイヤモンドを採掘するだけでなく、ダイヤモンド市場そのものを支配するという壮大な構想でした。
ローズは、優れた事業手腕と冷徹なまでの戦略によって、次々と周囲の鉱山を傘下に収めていきました。ライバル企業を買収したり、時には圧力をかけて合併を迫ったりと、その手法は多岐に渡りました。そして、19世紀が終わる頃には、デビアス社は世界のダイヤモンド生産の9割を支配する巨大企業へと成長を遂げていました。まるで一人の人間が太陽を独り占めするように、デビアス社はダイヤモンド市場を掌握し、その輝きを世界に供給する門番となったのです。
こうして築き上げられたデビアス社の強固な基盤は、今日まで揺らぐことなく、現在もなお、世界最大のダイヤモンド生産企業の一つとして、その名を世界に轟かせています。ローズが蒔いた小さな種は、時を経て巨大な樹へと成長し、その枝葉は世界中に広がり、人々の憧れの宝石を供給し続けているのです。