貴金属とはこの世にある金属類のうち、化合物をつくりづらい、希少性の高い金属を指します。すなわち、いつまでもそのままのかたち、色彩あるいは形態を長い間、保ち続ける金属類を「貴金属」といいます。
主な貴金属の種類
貴金属には主に以下の種類があります
金
黄金色の金属で、その美しさや加工のしやすさ、化学変化がもっとも少ないもので、世界中で古来より宝飾品や投資商品、電子部品等の産業用途として広く利用されています。金は腐食せず、科学的に変化しない為、それが金の美しさの不変性を物語っています。
主産地
USGS(アメリカ地質研究所)によれば世界全体の金生産量(鉱山生産量)は約9740万オンス(約3,030トン)。生産量上位3か国合計で世界全体の年間金生産量の約33%、上位10か国合計で世界全体の約62%を占めるといわれています。(2020年現在)
1位:中国(12%)
2位:オーストラリア(11%)
3位:ロシア(10%)
使用用途
- 文房具:万年筆のペン先に14金や18金が使われることがあります。
- 宝飾品:指輪、ネックレス、ブレスレットなど。18金や14金など金種も様々。
- 投資:金相場の上昇に伴い、金に対する投資に注目が集まっています。
- 工業用:主として携帯電話などの電子回路の接点に使われます。
- 公的金貨:各国の通貨として金貨が使われる場合があります。
- 歯科・医療用:金歯や歯科板金として使われることがあります。
銀
しろがね、と呼ばれるだけあって、白色の金属で、装飾品や食器、写真、電気の導体、ソーラーパネルの部材として使用されます。大気中の水分と亜硫酸ガスまたは硫化水素により硫化して黒っぽくなるのが特徴です。
主産地
アメリカのSilver Institute(SI)によると銀の世界全体の鉱山生産量は約8億2300万オンス(約25,600トン)。メキシコ・中国・ペルーの生産上位3か国合計で世界全体の年間銀生産量の約半分、上位10か国合計で世界全体の約83%を占めるといわれています。(2021年現在)
1位:メキシコ(24%)
2位:中国(14%)
3位:ペルー(13%)
使用用途
- 工業用需要:主としてソーラーパネル
- 写真フィルム:デジタルカメラの普及により、1999年以降減少
- 宝飾品:欧米やインドで人気があります
- 貨幣:コインブームにより需要増
- 投資:金相場に連動し、金よりも単価が安い為投資しやすいといえます。ただし国内では銀のインゴットは売り切れ状態が続いています。
プラチナ
銀白色の金属で、装飾品や自動車触媒、医療器具などに使用されます。プラチナは熱に強く、強度がある為、ガラスの製造工程で使用する装置に用いられています。
主産地
USGS(アメリカ地質研究所)によればPGM(白金族金属)の1つであるプラチナの年間生産量は約532万オンス(166トン)。南アフリカ共和国のみで世界全体の年間白金生産量の約3分の2、生産量上位10カ国合計で世界全体の約99.9%を占めるといわれています。(2020年現在)
PGMの世界生産においては一部の企業が圧倒的なシェアを持っています。Anglo American Platinum(南アフリカ共和国)、Implats(南アフリカ共和国・ジンバブエ・カナダ)、Sibanye-Stillwater(南アフリカ共和国・米国)、Nornickel(ロシア)、Northam Platinum(南アフリカ共和国)が代表的です。
1位:南アフリカ共和国(68%)
2位:ロシア(14%)
3位:ジンバブエ(9%)
使用用途
- 自動車触媒:自動車需要によりプラチナ価格が変動します。
- 宝飾品:結婚指輪や婚約指輪として。ダイヤモンドと組み合わせた宝飾品も多いです。
- 投資:金相場と連動しない為、分散効果が得られるといえます。
パラジウム
銀白色の金属で、自動車触媒や電子部品、宝飾品の割金(プラチナ、ホワイトゴールド等)などに利用されます。
主産地
USGS(アメリカ地質研究所)によればPGM(白金族金属)の1つであるパラジウムの年間生産量は約698万オンス(217トン)。プラチナ同様生産国が少ない資源であり、ロシア、南アフリカ共和国の2か国合計で世界全体の年間パラジウム生産量の約77%を占めています。(2020年現在)
世界最大のパラジウム生産国であるロシアでは世界最大のパラジウム生産企業である同国企業Nornickelがロシア国内生産において圧倒的シェアを持っています。
1位:ロシア(43%)
2位:南アフリカ共和国(34%)
3位:カナダ(9%)
使用用途
- 自動車触媒
- 歯科部門
- 電気・電子部門
- 投資:他の貴金属よりも値動きが激しいです。また、金相場と連動しない為、分散効果が得られるといえます。
- 宝飾品:ホワイトゴールドの割金として使われることがあります。
ほかにもいくつかありますが、化学的に安定しており、色彩、形態、性質の変化が少ないものを、そして一般的にこの4種を貴金属と呼ばれることが多いようです。
性質と魅力
化学的に安定し、色彩、形態、性質の変化が少ないものであるがゆえに、ひきつけられる魅力があります。では、その魅力をもう少し具体的に挙げてみましょう。
1.価値の保全
貴金属はその性質ゆえに、希少であり、長い歴史を持つため、時間が経っても価値を保つ特性があります。経済の不安定要因やインフレによって他の資産の価値が低下する場合でも、貴金属は価値を保ちやすいとされています。
2.世界的な需要
貴金属は装飾品や宝飾品としてだけでなく、産業用途や投資の対象としても広く利用されています。世界中で需要があり、国際的な市場で取引されることから、グローバルな影響を受けることができます。
3.価値の不変
性質が変わらない、数が少ないということそのものが魅力であるといえます。そしてそれゆえに、アクセサリーや製品としてだけではなく、投資を目的とした所有をする人たちもいます。また、インドや中国等のアジア諸国では宗教的・文化的に金の宝飾品を冠婚葬祭の際にプレゼントし合うことがあり、その点においても需要があると言えます。
投資とは「利益を得る目的で、事業・不動産・証券などに資金を投下すること」を指します。また、様々な要因で市場が変化します。投資はあくまで自己責任の下でお願いします。